地方公務員の平均年収は600万円～700万円と世間一般と比較すると高く、安定した職業に見えます。そんな地方公務員に対してなぜ「生活が苦しい」、「オワコン」だという声が上がるのでしょうか。
それにはいくつかの理由があります。
地方公務員の中でも地域手当、職種や配属部署、年齢といった違いによって年収は変わります。特に地方公務員の給与体系は年功序列に基づいており、若いうちは低い給与しか貰えません。
外で活かせるスキルが身に付かないため、民間企業への転職が難しいこともその原因です。さらに、副業が法的に禁止されているので、職場以外でスキルを獲得する機会が全くないことも問題です。
このように地方公務員には特有のデメリットがありますが、メリットもきちんとあります。リストラや倒産のリスクも低いため、安定した生活が送れます。また、退職金も多いため、定年まで勤めあげれば生涯年収は大きくアップします。
現在、地方公務員をされている方で生活レベルを上げたい方にはいくつかの改善策があります。信用力の高さを生かして有利な条件でローンを組めば、現在の生活を楽に出来ます。将来必ず給与は上がりますので、若いうちは我慢するのも一つの手でしょう。また、早いうちに給料の高い民間企業に転職してしまうのもおすすめです。
- 地方公務員の生活が苦しいのは地域手当、職種や担当部署、年齢の違いが原因
- 公務員の年収は地方公務員で663万円、国家公務員で667万円と言われる
- 地方公務員の20代の給料は300万円～380万円、若いうちの給料は低い
- 地方公務員は倒産しないため、長期的には安定した生活を送れる
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地方公務員の生活が苦しいと言われる理由とは
地方公務員の生活は苦しいと言われる原因は3つあります。
1つ目は地域手当や物価の違いです。勤務地に応じて物価や家賃、暖房費など負担する費用は異なります。地域手当は、この差を埋めるために支給されるお金のことを指します。都市部や山間部、寒冷地帯など、地域手当が多く支給される地域に勤めていれば給料は上がりますし、支給額が少なければ給料は下がります。この差によって、中には生活が苦しい人が生まれてしまうのです。
2つ目は給料や残業代の違いです。地方公務員といってもどんな職種に付くかによって給料は異なります。同じ行政職員の中でも、政令指定都市に勤める人は、それ以外の市町村に勤める人より平均年収が約80万円ほど高くなります。また国民健康保険課や福祉課といった人手が足りず残業の多い部署に配属されれば、残業代が給料に上乗せされます。このようにどこで働くかによって給料に違いが生じます。
3つ目は年齢の違いです。地方公務員の給料は「給料表」に基づいて定められますが、これは年齢や勤続年数に比例して年収が上がる仕組みです。そのため、まだ若い職員は給料が低くなります。特に若いながらも一人暮らしをしたり、家族を養ったりすると、生活は苦しくなるでしょう。
住んでいる地域で変わる地域手当や物価によって違いがあるから
地方公務員には地域手当と呼ばれるお金が設定されています。物価や家賃、暖房費など勤務地によって異なる支出金額の差を埋めるための手当です。
都市部など物価が高い地域や、離島や山間部など生活を送る上で不便な地域、暖房費がかかる寒冷地帯に住む職員に対して、地域手当は多く支給される傾向があります。
いくつか具体例を見てみましょう。
以下の例は高物価が特徴の都市部のものです。東京23区では月給の20％、大阪市と横浜市は月給の16％が手当として支給されます。また、国際空港がある地域は物価が高くなるため、成田空港周辺では16％、関西国際空港と中部国際空港周辺は12％です。
このように地域手当が貰える地域と貰えない地域では実質的な給与に差が生まれてしまいます。そのため、貰えない地域の地方公務員は生活が苦しいと言われるのです。
勤務地域や職種、配属部署によって給料、残業代が変わってくるから
ひとえに地方公務員と言っても、条件によって給料や残業代は変わってきます。
まず勤務地域が異なると給料は異なります。これは先ほどもお伝えしたように、地域手当があるかどうかの違いが理由です。
次に職種が異なることも理由に挙げられます。地方公務員全体の平均給与月額は、37万4163円と言われていますが、内訳を見ると差があることが分かります。市役所職員の内、政令指定都市の職員の平均年収は約703万円、政令指定都市以外の職員は約629万円です。また、都道府県庁職員の平均年収は約654万円です。このように職種によっても給料は異なります。
最後に、同じ職種内でも配属先によって給料は異なります。例えば同じ市役所に勤めている場合でも、国民健康保険課や福祉課は給料が高くなります。この理由は、これらの課は人手が足りず激務なため、残業が多く発生するからです。また選挙委員や税務課も、選挙が行われる時期や税金処理が集中する時期に当たると残業が発生するため、給料が増えます。
以上のように、地域手当が出ない、職種自体の平均年収が低い、残業が少ないといった条件に当てはまる地方公務員の給料は低くなります。
年齢がまだ若いから
地方公務員の給料は自治体ごとに定められた「給料表」に基づいて決まりますが、年齢と勤続年数に伴って給料が上がるという仕組みが取られています。
年齢や勤続年数が若い職員は給料が低いため、この制度が生活を苦しくする原因となります。
地方公務員の年齢ごとのボーナスを含めた平均年収は、
- 20代で300万円～380万円
- 30代で380万円～500万円
- 40代で500万円～630万円
- 50代で630万円～670万円程度
と言われています。
もちろんこの中でも職種や勤務地域、部署によって上下はありますが、やはり年齢が若いとそこまで給料がもらえないことが分かります。遊び盛りの若い方には、少し物足りない水準かもしれません。
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公務員の平均年収は高い？低い？
公務員の平均年収は平均的な民間企業の給料に比べて、高いと言えます。
地方公務員の平均年収は663万円、平均月収は36.3万円です。
国家公務員の平均年収は667万円、平均月給は約41万円です。
民間企業の平均年収は432万円、中でも正規雇用が494万円、非正規雇用175万円と言われていますので、地方公務員と国家公務員はいずれも世間的には高い給料を得ていると言えます。
しかし、公務員と言えども、最初から高い給料を受け取れるわけではありません。例えば、国家公務員と地方公務員ともに20代は300万円程度の年収しか貰えません。このように若いうちは低い給与しか貰えませんが、年齢と役職を上げることで給与が上がっていきます。
また、公務員の給与は民間企業の給与に基づいて定められますので、景気が悪いと公務員の給与も下がりますし、逆に景気が良ければ公務員の給与も上がります。
このように、基本的に公務員の平均年収は高いと言えますが、年齢や景気によっては必ずしも高いとは言えない場合もあることには注意が必要です。
地方公務員の年収の平均
地方公務員の平均年収は663万円、平均月収は36.3万円です。
ボーナスは各自治体によって大きく変動しますので一概に算出できませんが、東京都の場合、年間約185万円(月給の4.5か月分)がボーナスとして支給されています。尚、地方公務員のボーナスは原則的に国家公務員のボーナス動向に連動して定められています。
民間企業の平均年収は432万円、中でも正規雇用が494万円、非正規雇用175万円と言われています。地方公務員の平均年収は663万円ですので、民間企業に比べて約230万円ほど高いという結果になります。生活が苦しいと言われる地方公務員ですが、こうして比較してみると、世間的には高い給料を受け取っていることが分かるかと思います。
また地方公務員の中でもどの自治体に勤めているかに応じて給料は異なります。静岡県や神奈川県、三重県の地方公務員は国家公務員の平均年収より給与が高いですし、逆に青森県や大阪市の地方公務員は国家公務員の平均年収より給料が低いです。
国家公務員の年収の平均
では国家公務員の平均年収はいくらなのでしょうか。
国家公務員の平均年収は667万円(平均月給は約41万円)です。地方公務員より年間4万円しか高くありませんので、それほど差はありません。
ではボーナスはどうでしょうか。国家公務員のボーナスは、夏に約71万円、冬に約65.5万円、年間で約136.5万円です。東京都のボーナスが年間約185万円でしたので、国家公務員だからといって特別に高い給与を受け取っているわけではないことが分かります。
勤め始めの手取りは低くても、年齢とともに増えていく
公務員の給料は年齢に応じて上がっていきます。国家公務員であれば「俸給表」に基づいて、地方公務員であれば「給料表」に基づいて給与が定められています。
「俸給表」では、役職に応じた「級」と「号俸」が給与決定のファクターとなります。簡単に説明すると、昇進すると級や号が上がり年収も上がっていきますが、昇進には年齢も必要ですので、結果として年齢と給料が相関しやすくなるのです。
国家公務員の給与モデルの一部を見てみると、25歳の係員を務める人で月収約19万円、年収約317万円、35歳で係長を務める人で月収約27万円、年収約450万円となっています。
地方公務員の「給料表」は各自治体ごとに定められています。
地方公務員全体で見ると、平均年収はやはり年齢ごとに分かれています。20代では300万円～380万円しか貰えませんが、年齢を重ねるごとに増えていき、30代で380万円～500万円、40代で500万円～630万円、50代で630万円～670万円と収入は増えてきます。以上は年齢での給与水準ですので、役職が上がればさらに年収は増えていくでしょう。
このように、国家公務員と地方公務員はともに勤め始めの給料は少なくとも、年齢や役職が上がっていくとともに給料は増えていきます。
公務員の給料は景気に連動、不景気だと下がる
さらに公務員の給料は、人事院と呼ばれる機関が、民間企業の平均賃金を元に決定しています。そのため、民間企業の業績が上向く好景気だと公務員の給料も連動して上がり、不景気だと下がります。
この仕組みは月収だけでなくボーナスについても同じことです。民間企業の賃金が下がれば、公務員のボーナスも0.05か月分下がります。
ただし人事院が参考にするのは50人以上の規模の民間企業だけです。従業員50人未満の企業は参考にされません。また、反映されるタイミングにも時差があります。民間企業の給与が下がったからと言ってすぐさま公務員の給与も引き下げられるわけではありません。こういった理由から、公務員の給与水準は、世間一般の給料に対する感覚と少しずれてしまうことがあるかもしれません。
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地方公務員の給料は安くても福利厚生が充実していてつぶれない
ここまで見てきたとおり、地方公務員の給料は特に若いうちは低い水準にとどまります。
しかし、福利厚生が充実していることは非常に魅力的であると言えるでしょう。
住宅手当(家賃補助)は上限28,000円まで支給されます。特に若いうちの1人暮らしは負担が大きいですので、嬉しいポイントです。ただし、家賃16000円以下の人には支給されませんし、51,000円を超えると支給額は28,000円で頭打ちとなりますので注意してください。
平均的な退職手当は平均2142万円です。大企業の退職金約2500万円に比べるとすこし少ないですが、日本の平均的な退職金額約1,600万円に比べると高い退職金をもらっています。
また民間企業と違い、業績不振やリストラや倒産がないことも魅力の一つでしょう。
住宅手当・家賃補助
地方公務員には、住宅手当(家賃補助)が上限28000円の範囲内で支給されます。
家賃によって住宅手当の金額は異なります。以下の表を参考にしてください。
| 家賃 | 住宅手当 |
|---|---|
| 1円～16,000円 | 0円 |
| 16,001円～27,000円 | 家賃から16,000円を除いた差額分 |
| 27,001円～ | (家賃-27,000)÷2+11,000円で計算される金額、ただし28,000円を上限とする |
家賃が16,000円未満の人には住宅手当は支給されません。
家賃が16,001円から27,000円の人は、16,000円を上回った分を支給されます。例えば家賃が20,000円の場合、支給額は20,000円-16,000円＝4,000円となります。
家賃が27,001円を超える場合は所与の計算式に基づいて支給額が決定されます。例えば家賃が40,000円の場合、(40,000-27,000)÷2+11,000円＝17,500円が支給されます。ただし最大支給額は28,000円までですので、家賃が51000円を超えるとそれ以上は支給額が増えない計算になります。
退職手当が多め
一定期間継続して勤務した地方公務員に対しては、退職手当が支給されます。この退職手当は勤続年数に応じて付与されるのですが、ほとんどの地方公務員は長く勤めるでしょうから、高額の退職手当をもらえる人が多いです。
定年まで勤めた際の退職手当は平均2142万円です。大企業に勤めている人の退職金は約2,500万円ですので、それに比べると低いです。しかし、中小企業に勤めている人の退職金は約1,100万円、日本の平均的な退職金額は約1,600万円と言われていますので、世間一般と比べると地方公務員の退職金は多いと言えます。
勤め先の倒産やリストラの心配はほぼない
「安定」していることも地方公務員のメリットです。
民間企業であれば、その会社自体が10年後20年後に存続しているかどうかわかりません。会社が潰れてしまえば終わりですが、地方自治体が潰れるということはよほどのことがない限り起こりません。
またリストラの心配もありません。民間企業では景気が悪くなり会社の業績が落ち込むと、コストカットのためにリストラを行います。しかし地方公務員は税収が悪くても、職員の成績が芳しくなくても、リストラを行うことはありません。
このように、一度就職してしまえば退職まで安定して働けるのも地方公務員の特徴です。
ただし、法に触れる犯した場合などは停職処分や懲戒処分を受けることがあります。
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公務員がオワコンと言われるのはなぜ？
公務員がオワコンだという風潮があります。充実した福利厚生や、世間と比較して高い給与が貰えるのに、なぜそのような風潮が生まれるのでしょうか。
それには3つの原因があると考えられます。
公務員の得られるスキルは極めて限定的です。他の職場に活かせるスキルは身に付きません。
そのため、公務員から民間企業への転職は難しいのが現状です。転職採用に求められるのは即戦力ですので、公務員はその点で非常に不利になってしまうのです。
また、未だに副業が法的に禁止されていることもオワコンと言われる原因です。副業を通してスキルを上げたり、年収を上げることが出来ないため、なおさら公務員になるメリットは薄れてしまっているのです。
スキルがあがらない
公務員の業務を通して得られるスキルは、その職場でしか通用しないものがほとんどです。民間企業など他の職場で通用するスキルを身に付けられないことが多くあります。
民間企業であれば営業の経験、マーケティングのノウハウ、プログラミングの専門知識など、会社を変えても通用するスキルを習得することが出来ます。しかし、公務員でスキルの向上を期待することは難しいでしょう。
転職しにくい
また、「スキルが上がらない」ということは、公務員の転職の難しくする原因でもあります。
民間企業に転職をする際に求められる要素は即戦力です。新入社員と異なり、転職で入ってきた人をこれから育てることはあまりありません。前職で磨いたスキルをすぐに現場に活かすことを求められるのです。
繰り返しになってしまいますが、公務員の業務内容は極めて限定的であり、他の職場で活かせるスキルが身に付くことはとんどありません。そのため、一度公務員になってしまうと、転職がしずらくなるのです。
副業ができない
民間企業においては副業が当たり前になってきていますが、公務員の副業は法律上で禁止されています。国家公務員であれば「国家公務員法第103条」、地方公務員であれば「地方公務員法第38条」に明記されています。
仮に隠れて行っていた副業が発覚した場合、懲戒処分の対象となります。リスクを考えると、無理に副業を行うメリットはあまりないと言えるでしょう。
副業をすることで若い公務員は低い年収の足しにしたいでしょうし、職場では身に付かないスキルを習得したいと思うでしょう。副業が禁止されていることは公務員の大きなデメリットです。
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地方公務員で生活レベルを保つためにできる改善策
地方公務員は信用力の高さが強みです。若く、まだ給与の低いうちからローンの審査に通りやすい特徴があります。そこで、好条件のローンを利用して、生活水準を向上させることが可能です。
また20代～30代は給与が低いですが、その後はどんどん給与は上がります。この事実をきちんと認識して、将来年収が上がることを楽しみにすれば、現状の生活水準にも満足できるのではないでしょうか。
どうしても地方公務員の給与体系に満足できないという人は、早いうちに給与の良い民間企業に転職しましょう。大学卒業後の数年以内なら第二新卒として、ポテンシャル採用をしてもらえます。スキルがなくても採用してもらえる可能性が高いですので、すぐに行動しましょう。
ローンの審査に通りやすい、うまく活用する
地方公務員のメリットは信用力が高さです。基本的に勤め先が倒産することはありませんし、将来的に安定した給与が得られることも見通せます。そのため、金融機関は良い条件でお金を貸してくれます。
ある程度まとまった金額でもローンの審査に通りやすいですので、上手く活用すれば生活水準を向上させることが出来ます。例えば、お子さんがいる方は教育ローンを、マイホームを手に入れたい方は住宅ローンを好条件で契約すると良いでしょう。
20～30歳代は我慢、給料が上がるのを待つ
公務員の給与は基本的に年功序列の制度が採用されていますので、若いうちは年収が低くても、将来的には必ず高くなります。
後になれば楽な生活が送れますので、生活に余裕がない20代～30代のうちは無駄な出費を抑えて、堅実な生活を送るのが良いでしょう。
出来高制、コミッションのある給料のいい民間会社へ転職する
現状の給与に満足していないのであれば、給料の高い民間企業に転職するという方法もあります。
先述したように公務員は民間企業への転職が難しいです。そこでなるべく若いうちに転職活動を始めることをおすすめします。
第二新卒であれば、新卒入社でなくてもポテンシャル採用が可能です。つまり即戦力としてではなく、入社後に業務を身に付けてもらうことを前提に採用をしてもらえます。
一般的に第二新卒と呼ばれるのは、大学卒業後から数年以内の転職です。手遅れになる前に、素早く行動を起こしましょう。
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| この記事の監修者 | 山口みき |
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